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誹謗中傷や名誉毀損に関する法律(権利)

  • 2016年10月17日 | 5,691view

ネットの誹謗中傷|表現の自由と名誉毀損のどちらが優先される?

表現の自由

表現の自由は民主主義の基本となる重要な権利ではあるものの、他人の権利や国家の公益性を侵してまで行使して良いものではなく、悪質な表現は法律により罰せられることがあります。ただ、自由が認められる範囲と罪になりうる領域の境界は明確に定められたものではないので、どちらが優先されるべきなのかについては弁護士に相談しましょう。

憲法で保障されている表現の自由とプライバシーの権利

現代の日本では表現の自由が保障されていて、人々は国家や権力の規制を受けることなく自由に発信することができます。

「表現の自由」とは

「表現の自由」は憲法に定められた日本人の権利で、誰でも耳にしたことはあると思いますが、具体的には何に対するどんな権利なのでしょうか。まずは憲法の条文や歴史的背景を見ていきます。

民主主義における基本的な権利

表現の自由とは、様々な意見や見解について規制されたり検閲されたりすることなく表明できる権利です。日本国憲法第21条1項は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と規定しており、表現の自由は民主主義の過程を維持するうえで最も基本的な権利とされています。

歴史的な流れ

言論・表現の自由は、歴史的な流れの中ではまず宗教的な思想・信条の自由から始まったとされています。そこから学問の自由、そして政治的・社会的な思想・信条の自由へと拡大していきましたが、価値観が多様化した現代社会においては、「基本的にはあらゆる言論・表現に自由を保障する」という指導原理が提示されるようになっています。

名誉やプライバシーも法のもとに守られている

権利が保障されているのは表現の自由だけではありません。日本国憲法13条では「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については (中略)、最大の尊重を必要とする。」と定められています。またこれを根拠として名誉権やプライバシーの権利なども保護されていると考えられています。

名誉権とは

名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用などの人格的価値について、その人が周囲からどう見られるのかという社会的評価のことを指します。名誉権は人だけでなく、法人(法人格のない団体も含む)も享受できる権利とされています。

新しい人権であるプライバシー権

現代社会の急激な変化にともない、憲法制定時には予想されなかったような問題が起きるようになり、その結果新しい権利が主張されるようになりました。プライバシー権も「新しい人権」と呼ばれるもののひとつで、「私生活上の事実、または事実らしく受け取られるおそれがある事柄」や、「一般人の感受性を基準に公開を欲しない事柄」は法の下に保護されるようになっています。

表現の自由と名誉毀損のどちらが優先される?

表現の自由と名誉権は、両方とも憲法で保障された権利です。では、これらがぶつかったときは、どちらが優先されるのでしょうか。

自由が生み出すネットの誹謗中傷

インターネットを使って誰もが気軽に発信できるようになった現代社会では、「あらゆる言論・表現が保障される」という中で、他人を誹謗中傷するような表現が横行し問題となっています。

表現の自由は権力に対する国民の権利

言論・表現の自由が保障されていると言っても、これを掲げていれば何でも許されるというわけではありません。もともと憲法による「表現の自由」とは、政府の権力に制限を加えることで国民の基本的権利を保障するものです。

社会的害悪のある表現は取り締まられる

「あらゆる言論・表現に自由を保障する」という原理を表面的にとらえると、社会的に害悪があると考えられる言論であっても自由に発言して良いことになり、「表現の自由」とは本質的に反社会的な要素を併せ持つことになります。それゆえ逆に、ある種の言論・表現については、社会的害悪があるものとして当然抑制しても良いものと考えられていました。

他人を傷つける表現の自由は保障されていない

人権の行使は、他人の生命や健康を害したり、人間としての尊厳を傷付けたりしない方法によるものでないといけません。「表現」という行為は他者との関わりを前提としたものです。それゆえ、表現の自由は他人の利益や権利との関係で、制約が生じることになります。

ネット上での誹謗中傷の自由は許されていない

私人である国民個人どうしの関係において、憲法が保障する言論・表現の自由は直接には作用するものではありません。ネット上で特定の個人や法人を指して名誉を傷付けたりプライバシーを侵害したりする書き込みが行われるのは個人間の関係における表現となるので、基本的には表現の自由を保障される範疇には入っていないことになります。

何でも表現して良いわけではない

つまり、犯罪として禁止されているワイセツ表現や名誉毀損的表現については、憲法の保護を受けられない表現というわけです。表現の自由が保障されているからといって、どんな表現でも許されるわけではないことを、ネットのユーザーは肝に銘じておく必要があります。

ネットの誹謗中傷にまつわる権利侵害と犯罪

現代の日本社会では、表現行為によって他人の名誉やプライバシーを侵害することは許されておらず、違法な人権侵害に対しては、刑事罰や損害賠償義務が課せられます。

誹謗中傷により成立する犯罪とは

それは、インターネット上での発言でも同様です。ネットへ誹謗中傷内容の書き込みをすることは、刑法上の罪に当たる可能性があります。いくつか具体例を挙げてみましょう。

名誉毀損罪

刑法230条で、名誉毀損について「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています。

プライバシーの侵害

プライバシーの侵害は刑法上の犯罪には該当しませんが、民法709条の不法行為責任が成立すれば、不法行為に基づく損害賠償責任を負います。その金額は少なくても10万円、相手が有名人であれば数百万円にも上る可能性もあります。

侮辱罪

事実を示して公然と人の名誉を傷つけるのが名誉毀損罪であるのに対し、具体的な事実を示さないのは侮辱行為と言われています。刑法231条には「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」と定められています。

信用毀損罪・業務妨害罪

信用毀損罪とは、虚偽の噂などを流して他者の「経済活動上の信用」すなわち支払能力または支払意思に関する他人の信頼を毀損した場合に成立する犯罪です。業務妨害罪も同様に、虚偽の噂などを流して他人の営業行為を妨害する犯罪です。刑法233条では、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています。

人権侵害犯罪と表現の自由の調整

このように、重大な人権侵害は犯罪として取り締まられるようになっていますが、全てのネガティブ表現が対象になるわけではありません。表現の自由は憲法上きわめて重要な権利であり、公共の福祉と人権侵害の境界線も明確に引けるわけでなく、やみくもな規制は国家による権利侵害になってしまう恐れがあるからです。

違法性が阻却される三つの要素

刑法では人権保護と表現の自由との調整を図るため、以下の三要素が満たされた場合は違法性が阻却されるとしています。

  1. 事実が公共の利害に関わるものである
  2. 専ら公益を図る目的で摘示されている
  3. その事実が真実であるとの証明がある

犯罪事実や公務員等に関わる事実ではさらに要件緩和

政治家のスキャンダルなど犯罪事実や公務員等に関する事実についての表現の場合では、公共の利害に関わる事実であること、また公益性が担保されていることを理由に、①や②の要件が不要となっており、表現の違法性阻却の要件がさらに緩和されています。

最終的には司法判断による

実際には、名誉毀損などの人権侵害と表現の自由についての議論や訴訟が度々行われていることからもわかるように、こうした問題は複雑なため一般人が簡単に判断できるものではありません。

違法性の立証が必要

どこまでが自由でどこからが犯罪行為に当たるのか、明確な線引きがあるわけではありません。誹謗中傷の被害を受けたとしても、相手方を訴えたり犯罪として取り締まるには数々の要件を立証する必要があるのです。

解決のためには弁護士に相談を

結局、誹謗中傷問題には書き込んだ人、書きこまれた人、サイト管理業者などがそれぞれに主張を持っており、司法の場で争うことになるケースも珍しくありません。自分が主張する権利は守られるものなのか、具体的なことは法律の専門家である弁護士に相談し、解決に向けて動いてもらうのがよいでしょう。

憲法上では表現の自由が認められているものの、人権侵害に関わる内容であれば一定の制約がかかります。しかし、誹謗中傷表現の自由と名誉毀損のどちらが優先されるべきかについては素人では判断が難しく、司法の判断に委ねられることもあります。困ったことがあれば、ITに強い弁護士にまず相談してみることをおすすめします。

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