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誹謗中傷や名誉毀損に関する法律(権利)

  • 2016年10月17日 | 7,787view

名誉毀損罪と侮辱罪の違い|誹謗中傷の種類について

名誉毀損

インターネットは今や私達の生活に不可欠な存在と言えます。ネット上での交信は通常匿名である上相手の顔が見えないため、感情に任せて無責任な発言をしてしまいがちですが、場合によっては重大なトラブルに発展することもあるので注意が必要です。そこで今回は、インターネット上の発言と法的責任について解説していきます。

「名誉毀損」「侮辱罪」になる?インターネット上の発言と法的責任

電子メールにホームページの閲覧、動画視聴にネット通販。インターネットの普及はあらゆる点において私達の暮らしを豊かにしてくれました。ネット上では相手の素性も顔も分からない状態でやり取りが行われるケースが多いですが、後先考えずに発言をしてしまうと、法的責任を問われる事態に発展してしまうこともあるので注意が必要です。

名誉毀損・侮辱罪

インターネット上の発言に端を発するトラブルで最も多いものの一つが誹謗中傷や侮辱等による「名誉毀損」でしょう。名誉毀損・侮辱罪といった言葉は日頃テレビや新聞等で見聞きすることが多いですが、実際はどんな罪なのでしょうか。

名誉毀損罪・侮辱罪とは

名誉毀損罪は刑法第230条で「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と、侮辱罪は刑法第231条で「事実を摘示しなくても公然と人を侮辱したものは、拘留または科料に処する」と規定されています。

“具体的な事実”を示して名誉毀損したら名誉毀損罪、“抽象的な評価”による場合が侮辱罪

条文では両者の違いは分かりにくいかもしれませんが、「事実の摘示」があったか否かによって区別することができます。「事実の摘示」とは人の名誉を損なう、若しくはその可能性のある具体的な事柄を文章若しくは口頭で暴き示すことです。この「事実」には「すでに広く知られていることも含まれます。また、単なる噂話であったとしても罪に問われることがあり、例えば「彼は不倫をしているらしい」と言えば名誉毀損罪の問題になります。

一方、具体的な事柄を挙げずに抽象的な意見や判断によって人の社会的地位を低下させた場合は侮辱罪になるわけです。ただ、名誉毀損罪も侮辱罪も“親告罪”なので被害者が告訴しなければ裁判を受けることはありません。

罪に問われないケースは?

しかし名誉毀損罪には事実の摘示があった場合でも違法性が認められない例外規定があるのです。どういったものなのか具体的に見ていきましょう。

名誉毀損罪が成立しないケース

この規定は1、摘示した事実が公共の利害に関する事実であって、2、公共の利益を図る目的でなされたものであり、3、その事実が“真実”である(真実性の証明がある)か真実性の証明がなくても真実と信ずるに足りる理由がある場合には名誉毀損罪には当たらないとするものです(刑法第230条2第1項)。尚公務員または公務員の候補者に関する事実については1と2の要件は不要であり、真実性の証明があれば名誉毀損罪には該当しませんが摘示された事実が私的なものであれば違法になり得ます。

名誉毀損罪に当たらなければ原則、侮辱罪にも当たらない

前述の様に名誉毀損罪と侮辱罪は表現行ためが事実の摘示に当たるか否かで区別され、公然と社会的評価を低下させるという要件は同じです。従って、公然ではない、あるいは社会的地位を貶めてはいないと判断され名誉毀損罪に該当しない行ためは原則として侮辱罪にもならないと言えます。しかし成立要件「事実の摘示」がないという理由のみで名誉毀損罪に該当しない場合、例えば「彼女は性悪だ」等と発言した場合等は侮辱罪に問われる可能性があるのです。

インターネット上の発言は名誉毀損罪や侮辱罪にあたる?

名誉毀損罪や侮辱罪は3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処されるわけですが、民事訴訟でも損害賠償等を請求されることが多いです。

名誉毀損や侮辱をされた場合の対処は

一般的には刑事告訴と共に民事裁判で損害賠償を求めるケースが多いと言えますが、インターネット上の発言によるそれの場合、難題があります。ここでは被害に遭った場合にとれる措置等を解説します。

損害賠償や当該記事の削除を要求できる

民事上は名誉毀損という不法行ために基づく損害賠償請求となりますが、刑法の様な明文上の成立要件はなく、裁判所は刑法と同様の要件で判断します。また民事上の名誉毀損では謝罪広告の掲載を要求できます。これは不法行ためが名誉毀損によるものである場合に特例で認められる損害賠償請求の方法です。加えて名誉毀損の当該箇所の削除を求めることができます。

しかし個人がネット上の名誉毀損で民事訴訟を起こすのは困難

民法第723条では「他人の名誉を棄損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、または損害賠償と共に、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる」と規定しています。しかし原則として民事裁判の場合は被告を原告自身が特定せねばならず、この点がインターネット上の発言による名誉毀損で民事訴訟を起こす際の高いハードルになると言えます。

名誉毀損罪や侮辱罪の他業務妨害罪や信用棄損罪に問われることも

更にこうした批判が企業やその商品に向けられた場合、名誉毀損罪や侮辱罪にとどまらず信用棄損や業務妨害の問題(刑法第233条)に発展することがあります。ここでは仮想のケースで具体的に見ていきましょう。

口コミの投稿にも注意が必要

商品やサービスを購入した消費者が様々な感想を持つのは至極当然です。中にはネガティブな評価も多いでしょう。問題はこうした所謂“レビュー”をwebサイト等公開されている場に提供した際に法的責任が発生するのはどんなケースかです。

正当な批評は認められる

商品そのもの、或いは商品の販売行ために対する批判は公の場でなされることも多く、この様な行ためは表現の自由として手厚く保護されています。従って本来は自由な発言が認められて然るべきですが、同時に事業者側にも商品を製造してこれを販売する自由、経済活動を行う自由が保障されているのです。

こうした観点から“正当な発言は保護される一方で、虚偽の噂を流す等の不当な発言は処罰対象となる“という落としどころになっているわけです。もちろん「スナック菓子は体に悪い」といった表現、「昨日梅田で飲んだジュースはまずかった」等特定の商品や事業者を名指ししない批判は問題ありません。

虚偽の内容の場合

問題となるのは特定の事業者や商品を批判する場合です。例えば「あの会社のこの商品には危険な農薬が使われている」との発言があったと仮定した場合、“農薬が使われている”といった具体的な事実を摘示しているため名誉毀損罪に該当する他、業務妨害罪に当たる可能性もあります。こちらもやはり事実の真偽が問題となり、事実が嘘であったり、その様に信じる相当の理由がない場合には虚偽の風説を流したとして業務妨害罪になることがあるのです。

企業の不祥事をネットで糾弾した場合は

また現実に私達がネットに批判を書き込むケースで多いものの一つに、企業の不祥事に対しての書き込みが挙げられます。ではこの場合は正当な表現行ためとなるのでしょうか。ここでは“リコール隠し”の例を挙げて解説します。

発言内容が真実で批判が公益目的なら正当と認められる

設計や製造のミスが原因で生じる不具合が特定の自動車等に認められた際、本来企業が公表して交換すべきところそれを隠し販売を続ける「リコール隠し」。いつの時代にも発生する非常に由々しき問題ですがこれに対してネットで批判した場合、書き込み主が企業内部の人間でリコール隠しが実際にあると確認した上でのことならば、それは内部通報として保護される行ためで当然正当な表現と見なされます。

違法になり得るケース

しかし企業外部の一般人が、ネットの個人ブログや週刊誌の記事からの情報でその事実を認知し憤りと共に批判している場合では事情が異なります。企業がリコール隠しを公表しているならば問題はありませんが、事実関係が明らかになっていないにも関わらず、手元の個人ブログや週刊誌の記事程度のネタからそれが真実であると憶測して批判した場合は、書き込み主は罪に問われる可能性があるのです。

ただこのケースでもリコール隠しが真実であると批判主が誤信した相当の理由があると判断されれば、名誉毀損の意図はなかったと見なされ名誉毀損罪が成立しない可能性はあります。また、当該企業への個人的な恨みを晴らすためにリコール隠しを糾弾する行ためは公益性を欠くことになるので、正当な言論と認められないこともあります。

名誉毀損の問題で法的責任の判断が難しいケース

この様に名誉毀損の問題、分けてもインターネット上の発言によるそれは法的責任の有無の判断が極めて困難なのが実際です。ここではこの辺り考え方等を解説します。

正当な批判と誹謗中傷の線引きは

近年企業が不祥事を起こしてネットで批判される事例が急増しています。悪しき行ためをした者が批判される、それは言論の自由からも然るべきことです。では、正当な批判と誹謗中傷との区別、即ち違法か否かの判断は如何様にすればよいのでしょうか。

正当な言論でかつ公開する正当事由がなければ違法

憲法で保障されている表現の自由の考え方からは、誰でも自由に批判してよいことになっています。しかしネット上の発言に限ったことではありませんが、反論できない、或いは反論しては意味がないケースも多いのが実際です。例えば「お前は阿呆だ」「腰抜け」等と言われた場合、阿呆かどうかは立証できない上腰抜け等といった抽象的で程度の概念であるものについては、議論しても平行線をたどるだけでしょう。否定的な評価を押し付けたり、人の名誉を傷つける目的で事実無根のことを言ったりする行ためは正当な言論とは言えないのです。

法的責任の有無の判断の最重要ポイントは「事実の有無」

誹謗中傷でなく正当な批判と見なされるためには事実に基づいていることや、批判に正当性があることが重要です。批判する場合には相当の根拠、事実が必要で、そうした“裏付け”がないものは、人の名誉、信用を守るために違法になるわけです。誹謗中傷と区別するための最も重要なポイントは「事実や根拠の有無」と覚えておきましょう。

インターネット上での発言に対しての法的責任の訴求は取り分け難しい

インターネット上での発言による名誉毀損については従来のマスメディアでのそれと情報の質や発信者等様々な条件が異なるため、議論を呼んでいます。

マスメディアでの名誉毀損の判断基準をネット上でのそれに当てはめるべきではないという声も

従来のテレビや新聞、雑誌等の表現媒体では情報を発信できるのは限られた人だけでした。しかしインターネット媒体では新聞社や報道局、或いはそこに属する人物でない、一個人でも容易に情報主体に成り得るため、その情報の収集・拡散の速度や程度もマスメディアのそれとは大きく異なります。

この様な差異を加味せずにこれまでの名誉毀損罪の成立要件及び免責基準をそのままインターネット上での名誉毀損行ための判断基準とすることには問題があると言えるのです。これに関して、インターネットの個人利用による名誉毀損行ためについてこれまでと異なる基準を適用すべきとして問題が提起され、名誉毀損罪の成否について争われた裁判事例があります。

ネット上の名誉毀損には特段の免責基準が認められるか?

その事例は自ら開設したホームページの上にフランチャイズによるラーメン店の募集等を手掛ける会社の名誉を棄損しようと企てた事件でカルト集団である旨の虚偽の内容を記載した文章を掲載する等したものです。第一審ではインターネット上のこの手の情報はそもそも信頼性が乏しいこと等を理由に、被告人に無罪を言い渡しましたが最高裁ではそれに対し「個人利用者がインターネット上に投稿したものであっても押しなべて信憑性の低い情報として閲覧者が受け取るとは限らない」等として一審による新たな基準を否定し、罰金30万円を言い渡したのです。

インターネット上の発言は、名誉毀損や業務妨害、信用棄損等の罪に問われる可能性があります。誰にでもボタン一つで簡単に投稿できるインターネットだからこそ、書き込み内容には細心の注意を配ることが大切です。

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