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ネットの炎上

  • 2017年07月19日 | 3,355view

企業が起こしたネット炎上~PCデポの高額解除料炎上事例

PC

ネット上で特定の人物への非難が殺到し収拾がつかなくなる“炎上”が近年立て続けに発生しており、社会問題になっていることは周知の事実でしょう。しかしこの炎上の批判の矛先は個人ばかりでなく、企業に向けられるケースもあるのです。そこで今回は、企業炎上の一例としてPCデポの高額解除料炎上事例を解説していきます。

企業が起こした炎上事例 PCデポの高額解除料で炎上

インターネットに不適切な投稿をしたことで世間から批判が集まり収まりがつかなくなる事例が近年多発しています。こうした炎上事例は“バカッター”と揶揄される個人が起こすイメージが強いですが中には企業によるものもあるのです。次に紹介する事例もその一つです。

PCデポが高齢者を騙し高額解約料をとって炎上

神奈川県横浜市に本社を置き、関東圏を中心にパソコンやスマートフォンの販売、修理等ネットワーク事業を全国展開する小売店「PCデポ」が80歳を超える高齢者に詐欺まがいの行ためをしたとして炎上騒ぎになった事例があります。

高額な契約解除金を請求された

事が起こったのは2016年夏のことです。とある高齢者に対してPCデポがパソコンに慣れないお年寄りのためにサポートするサービスを結ばせました。息子が8か月後に認知症の父親が月額14,245円の契約を結んだことを気付き、契約の解除を申し出たところ契約解除料20万円を請求されたのです。息子はこれに抗議し解約料は半額近くになったものの収まらず、経緯をネットに投稿しました。

認知症の高齢者には過剰なサービス内容の契約だった

この契約は料金もさることながらその内容も合計十台までの端末サポートをするもので、独り暮らしの高齢者に対するサービスとしては明らかに不適切だったと言えます。また父親は2015年にもPCデポとトラブルになっておりその際息子が父親は認知症であるため一人で契約させないよう同社に伝えていたにも関わらず、今回の事例が発生したのです。これに関してPCデポ側は父親に「息子に内緒で契約したい」と言われた旨を主張しています。

PCデポの事後の対応が問題を大きくした

この事例は一時期各メディアで報道される大騒動に発展しました。そこには高額サポート料や解約金に加えてPCデポ側の事後の対応にも批判が殺到したことが理由としてあります。

PCデポ側は悪びれる様子を見せなかった

批判が集まったPCデポの対応の一つが、悪かったことでしょう。当初息子を交えて父親が社長との面談を予定していたものの断られ会社の幹部との面談になったのですがその際、会社側が開口一番に父親の身分証明証の提示を要求してきたのです。

事前に身分証明書が必要と伝えられていなかったため、所持していないと息子が伝えると、PCデポ側は「そうは言っても、本人確認しないとどうしようもない」「本当に本人かどうかわからない」等と笑いながら繰り返したと言います。そして生年月日や電話番号等の個人情報を口頭で確認する流れになったものの、認知症を患っていた父親は自宅の電話番号等をハッキリと思い出すことができませんでした。

返金の申出があったが交渉決裂

結局PCデポ側が謝罪して支払い済みの10,8000円の返金の申出がありましたが息子はPCデポのそれまでの対応に憤慨していたため「もはや金額の問題ではない」と退けたと言います。初めから社長が出てきて真摯に謝罪し、契約に問題があったことを認めていればここまで“泥沼化”することは無かったでしょう。

PCデポの事例はなぜ起きたのか

今回の事例の問題点ついて契約内容やPCデポ側の事後の対応等を中心に詳しく掘り下げていきましょう。

契約内容で問題となった点は

当事例で批判の的になったのはプレミアムサービスと呼ばれる月額制の料金プランで、父親には過剰なサービス内容だったのです。

PCデポのプレミアムサービスとは

PCデポの「プレミアムサービス」は端末の初期設定、インターネットやWi-Fiの設定、I pad 等のレンタルやセキュリティサービス、クラウドへのバックアップ等がセットになった月額会員制サービスで、対象デバイスの数等に応じてA~Fプランまで6プランあります。

丸め込まれて契約させられたと見られる

父親が契約したのはこの内の最も料金が高いF(ファミリープラン)でした。しかし彼は独り暮らしであり利用状況にそぐわない不要なサービスを販売員の口車に載せられて契約してしまったことは明らかで、“判断能力の衰えた高齢者を食い物にする悪徳商法”と批判が殺到したわけです。

PCデポ側は謝罪するも信用はガタ落ち

この事態を受けPCデポは非を認め公式に謝罪したものの、一旦失った信用は取り戻せず、売り上げも激減しました。

謝罪するも株価急落

PCデポは今回の批判を受け、コースの変更や契約解除を無償にしたり、70歳以上の消費者が新規加入する場合は原則として家族に確認する様定める等の対策を講じました。既存会員についても不適切な契約がないか、利用状況の確認をする処置も取っています。しかしながら時すでに遅し、PCデポの株価は暴落、自らの首を絞めることになってしまったのです。

PCデポの問題は企業の体質が原因だった

今回の様な“詐欺まがい”の事例はなぜ起こってしまったのでしょうか。その背景には現代日本資本主義経済に潜む闇が見えてきます。

“トウゼンカード”の存在

PCデポでは売り上げ目標等をまとめた「トウゼンカード」と呼ばれるものがありました。 “これくらいはできてトウゼン”といったスタンスで従業員にノルマを課すこのカードの存在が、売り上げを伸ばすためなら手段を選ばない構えに繋がったと言えそうです。しかし他の多くの企業でも名称こそ違えど、この手の販売目標やマニュアは存在します。では何故PCデポはこうなってしまったのでしょうか。

売り上げのノルマが厳しすぎる

その理由としてまず挙げられるのが「厳しすぎるノルマ」でしょう。このトウゼンカードは、一連の事件に対してPCデポの社長が会見を開いた際、「ノルマは貸していません。現場の暴走です。」等とコメントしたことに反発した従業員が匿名で流出させたもので、全社員が所持していると言います。月間の売り上げ目標等が記載されているのですが、注目すべきは「iPhone、iPad、iMac、iPodを一気に全部買わせる(平日・土日1件ずつ)」や「解約に来た客を説得して解約させないようにする」等と異常な項目が連なっていることです。

従業員も悪質な販売法を取らざるを得なかった?

更にトウゼンカードに記載された内容を実行できなかった場合、重いペナルティーも課せられたと言います。例えば「解約に来た客を説得して解約させないようにする」の項目を達成できない即ち解約を思い止まらせることができない場合、店の売り上げにマイナス6万円がつくと言った具合です。こうした利益至上主義が今回の様な詐欺まがいの商法に繋がったと言えます。

会社の経営方針

PCデポは、元々は真っ当なやり方で営む会社でした。しかし利益率を重視し、あるとき経営戦略を変えたことによって今回の事例が起きたのです。

社長の指示でビジネスモデルが変貌した

PCデポはパソコン類の修理等を主に扱う会社でしたが、ある時社長の号令により「シニア向けサービスで利益を出す」ビジネスモデルに変わります。そしてそのことが、「シニア向けに不要な契約を結ばせてももうけを出せ」という従業員のやり方に繋がったのでしょう。

本部から各店舗に指示を出していた

またPCデポはサイバーシェリフセンター(店舗危機管理室)を設置し必要に応じて本部が各店舗に直接指示を出していました。販売員は店舗内に設置されたウェブカメラで、勤務の様子を本部に常に監視されていたのです。

トウゼンカードの存在に加えてこの様な状況下にあったため、不必要と知りながらも売りつけざるを得なかったことが予想されます。或いは良心の呵責に苛まれながら契約させていた従業員もいたかもしれません。しかしこう言った運営方式では実質的に本部が指揮をとるのと同じで、社長の「現場の暴走」とのコメントは自己保身のための詭弁以外の何物でもないことがうかがい知れると言わざるを得ず、社員たちが激怒するのも無理はありません。

PCデポの炎上事例から見えてくるマーケティングの問題点

今回の事例は同じ“炎上”でも連日世間を騒がしている“バカッター達”のそれとは全く違った問題が露見したと言えます。

狙われるシニア層

本来であれば顧客に喜んでもらうことをあらゆる業種が目標とすべきです。しかしこうした悪質な業者にしてみれば、ユーザーの“満足”や“納得”よりも“売り上げ”が全てなのです。それゆえに騙しやすい高齢者がターゲットになってしまいました。

高齢者の弱みに付け込む

もちろん全ての方がそうではありませんが、概して高齢者はIT関連の知識が乏しく、販売側の説明を鵜呑みにしてしまいがちです。また高齢者、特に独居の方ともなると普段人と話す機会が少なく、販売業者に話し相手になってもらうだけでも喜ぶ傾向にあるため、騙され易いと言えます。

金銭的に余裕がある

加えて高齢者は若年層と比較して経済的にも余裕がある場合が多く、少々高額でも「このくらい」と思い支払いに応じてしまう傾向にあるため販売業者側からすると格好の“カモ”な訳です。

悪質なマーケティング戦略の横行

さらに近年では高齢者だけでなく比較的パソコン関連の知識に疎いユーザーを狙った事例も多発しており、消費者の無知に付け込んだ悪質な商法として近年問題となりつつあります。

ITに疎いユーザーを狙う

物心つく頃から周囲にインターネット環境があった現在の10代~20代のことを指して“デジタルネイティブ(デジタル世界の先住民)”と呼びますが、そうでない世代、“デジタルイミグラント(デジタル世界の移民)”の内、特にこの方面に明るくない中年女性層のユーザーを狙った事例も多発しています。

無知に付け込み不安を煽る

業者はこうした人達の無知に付け込み、ある程度知識を持つ人なら何の不安も持たない様な事象について“危険です”等と不安を煽って不要なサービスや商品を購入させるのです。例えばスマートフォンのアプリのアップデートの通知表示を危険な状態であるとして有料サポートを申し込む様丸め込む、といった具合です。
今回のケースは顧客満足よりも利益優先のPCデポの企業スタンスが引き起こした、起きるべくして起きた事例と言えます。しかしこうした“マネーファースト”の企業はいくらでもあり、この事例は氷山の一角に過ぎないでしょう。SNSの普及は投稿者のつぶやきが炎上しやすく、思わぬ事態に巻き込まれることがあります。一度起きた炎上はすぐに鎮火することはなく、企業の信頼失墜にもつながります。企業側はこうした問題が起こったときには責任の所在を明らかにし、信頼の回復に努めるべきでしょう。

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