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ネットの炎上

  • 2017年02月08日 | 11,669view

バイトテロとは何か―吉野家の炎上事例より―

バイトテロ

インターネットへの動画の投稿に端を発した吉野家の「テラ豚丼」の炎上騒動では、その情報発信者がアルバイト店員本人でした。そのことから炎上によって企業が晒されるリスクと、アルバイト店員による通称「バイトテロ」について考えてみます。そして、企業にできることとは何でしょうか。

「テラ豚丼」騒動はどのようにして炎上したか

吉野家のアルバイト店員による炎上騒動の概要を確認し、どのような経緯で炎上に発展したのかを見ていきます。一般的な炎上が起きるメカニズムについても検証してみます。

「テラ豚丼」騒動の概要

2007年に起きた吉野家の「テラ豚丼」騒動は、動画サイトへの投稿が引き金となりました。まずは、その経緯について確認したいと思います。

動画サイトへの投稿

2007年11月30日、「【吉野家で】メガ牛丼に対抗して、テラ豚丼をやってみた【フリーダム】」というタイトルの動画が公開されました。吉野家の厨房と思われる場所で、アルバイト店員が豚丼の具を大盛りにし「テラ豚丼」を作成する様子が撮影されています。

炎上

動画投稿後、「食べ物を粗末にしていて不快」「不衛生」などという批判が殺到したため、当該の動画は12月1日に本人によって削除されましたが、元の動画を保存していた人物がニコニコ動画やYouTubeに再び投稿したことで、さらなる拡散と炎上を招いてしまいました。

吉野家が謝罪

吉野家は「お客様には大変不安・不快な思いをさせてしまったことを、心よりお詫び申し上げます」と謝罪し、「全社を挙げて該当店舗・従業員を特定し、確認が取れ次第厳正に処分する。会社としても、再度従業員教育を徹底する」と文書にて発表しました。

吉野家炎上の経緯

吉野家の騒動において、どのようにして炎上が起こっていったのでしょう。炎上のメカニズムを明らかにしながら、その過程を追ってみます。

炎上のメカニズム

炎上は一般的に次のような流れで起こります。

炎上するメカニズム
①発端フェーズ まず少数の人が、発見した不祥事を自分のSNSなどを通じて発信します。
②深堀・拡散フェーズ ①で投稿された内容がtwitterやインターネット掲示板などで拡散されます。
③炎上フェーズ ②からまとめサイトやニュースサイトに公開され、事態が大きくなっていきます。

「テラ豚丼」騒動の場合

発端は撮影者本人によるニコニコ動画への動画配信でしたが、その動画を別の人がYouTube、ニコニコ動画に公開したことでより多くの人に晒され拡散しました。多数の人の目に触れれば、それだけ多くの批判的なコメントが元の投稿者に寄せられることになり、炎上という事態が起きたのです。

なぜ炎上するのか?

炎上とは不祥事の発覚をきっかけに、非難が殺到する事態または状況を差します。では、炎上はどのような原因によって、どこから発生するのでしょうか。企業と炎上の観点から明らかにしていきます。

炎上の原因

炎上事件にも様々な原因がありますが、主に多いのは次に挙げる3つの原因に分類することができます。

非常識な行動や悪ふざけ

2013年に多発したバイトテロと言える一連の炎上事件がこれに当たります。店の商品を使ってふざけたりしたり、店舗の什器で遊ぶ画像を投稿して非難が集中する場合です。

極端な発言

政治的な発言や思想、宗教に関する内容などは炎上のネタになりやすいと言えます。個人的な思想は炎上しやすくSNSの投稿にはリスクがありますので、もし投稿するときはそのリスクを踏まえて誹謗中傷の対象にならないよう、誤解のないように注意しましょう。

いわれのない悪意

自分に特別非がない場合でも、挑発的な発言を繰り返してくるユーザーがいます。ネットストーカーとも言われ、個人情報を検索して拡散したり、ある個人の発言を掲示板に書き込んで故意に炎上させる人がいることも事実です。

炎上の発生源

炎上の火元はどこにあるのでしょうか。発生源によって対処方法が変わってきますので、どこから炎上が起きるのか確認しておきましょう。

ユーザーアカウントによる炎上

企業であれば商品の消費者やサービスの利用者がいますので、そのユーザーからのクレームが拡散することで炎上が起きます。一人のユーザーによる拡散から多数の誹謗中傷が殺到してしまいます。ここで対応を間違えるとさらなる炎上につながることも考えて適切に対処する必要があります。

企業アカウントによる炎上

企業アカウントというのは、その会社を代表して発信しているという意識が薄い場合に炎上を起こしやすくなります。多くの人の目に触れる企業の発言は、誰が見ても誤解や不快な思いをすることがないよう配慮することが求められます。

従業員アカウントによる炎上

今回の吉野家の事例がまさに従業員のアカウントによる炎上です。マスコミを騒がした2013年の炎上事件はほとんどがこのパターンでした。従業員による炎上はSNSを利用する際のルール作成とその教育が徹底されていないことに炎上の原因があります。このパターンについては次章で詳しく見ていくことにします。

アルバイトによる炎上「バイトテロ」

従業員アカウントによる炎上が発生することは先に触れました。この従業員がアルバイトであった場合「バイトテロ」と呼ばれることがあります。2013年に起きた数々の事例は、「バイトテロ」という言葉をキーワードとして、よりマスコミにも取り上げられやすくなりました。

バイトテロとは?

改めて、バイトテロの定義を確認し、その事例を挙げてみましょう。

バイトテロの定義

アルバイトの店員が店の商品(特に食品)や什器を使用して悪ふざけを行う様子をスマートフォンなどで撮影し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿して炎上する現象を指す日本の造語です。
参考:

バイトテロの事例
ローソン 店員が売り場の冷凍庫に横たわる画像を公開したことで、当該店舗が閉店に追い込まれました。
ブロンコビリー 店舗のキッチンにある冷蔵庫に入っている店員の画像が投稿され、当該店舗の退店に至りました。
蕎麦屋泰尚 店員が店内で悪ふざけをしている数々の画像を公開。店舗は閉店し、その後倒産という最悪の事態を招きました。

バイトテロの法的責任

アルバイト店員が起こした事件であっても、法的責任があることは明らかです。どのような罪に問われることがあるのかまとめてみました。

業務妨害罪

他人の業務を妨害することによって成立する犯罪。今回の場合、冷凍庫に入ることはアイスの販売を中止または制限する状況を引き起こすため、この行為が「威力」に当たると考えられ威力業務妨害が成立し得ます。

器物損壊罪

他人の所有物を損壊するなどして、その価値を減少・滅失させる罪です。冷凍庫内のアイスを売ることができなくなった場合、器物損壊罪が成立する可能性があります。

食品衛生法違反

これは飲食によって生ずる危害の発生を防止するための法律です。もし不衛生な状態に置かれた食品を販売・提供した場合は食品衛生法違反となる可能性があります。

バイトテロを防ぐ

バイトテロは従業員の教育を徹底させることが最大の防止策です。次に挙げる方法を研修の段階から行うこと、また日々の業務の中で確認を怠らないことが大切です。

ソーシャルメディア・ガイドライン作成

ソーシャルメディアと言うと範囲が広くなってしまいますが、具体的にはSNSの利用についてガイドラインを設けることです。どこまでがOKでどこからがNGなのかを、具体的かつ分かりやすくすることが重要です。具体例を示せばアルバイト店員でも理解しやすいでしょう。

リスクの大きさをイメージさせる

アルバイト店員による炎上事例の特徴として、自身の投稿によって発生するリスクについて想像が及ばなかったということがあります。炎上が起きると個人名、住所、学校名などの個人情報がインターネット上に晒されたり、企業から損害賠償を請求さられる可能性があること、投稿した画像やコメントがネット上に残り続けるので将来に不利な影響が及ぶことなどをイメージしてもらいます。

誓約書にサインしてもらう

損害賠償に関する書面にサインしてもらうことで、バイトテロの抑止力となります。また、仕事上で得た情報を他言しないことについても署名してもらえば、情報漏洩をしてはいけないことと、もしそのようなことがあれば損害賠償を請求する旨を明確に伝えることができます。

吉野家の炎上事例からバイトテロとはどんなものか、どのように対策ができるかを考えてきました。バイトテロは悪意を持って企業に損失を与えているわけではないので、しっかりと教育を行えば未然に防ぐことができます。アルバイトの教育や研修に労を惜しまず、炎上のリスクを最大限に減らす努力を企業側もしていきましょう。

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