デジタルタトゥーの恐怖|ネットで炎上した画像や書き込みは消えない
悪ふざけの画像を投稿するバカッターなどの行為は、閲覧者に保存・拡散され投稿者の個人情報や顔写真が晒される炎上騒ぎを引き起こします。投稿者は半永久的に残るデジタルタトゥーの影響に苦しみ、家族や関係者の人生を狂わせてしまうこともあります。投稿時の冷静さや、ネット上に個人情報を垂れ流さない危機管理意識が大切です。
目次
ネットユーザーは必ず知っておくべき「デジタルタトゥー」とは?
ネット上には様々なテキストや画像が溢れていて、パソコンやスマートフォンで簡単に保存・複製できます。あなたの投稿・書き込みを誰かが保存して拡散すれば、削除が追いつかずネット上に半永久的に残るのです。これを、一度入れたら消すのが難しい刺青に例えて「デジタルタトゥー」と呼びます。
悪ふざけ画像がネットで炎上
近年、「バカッター」や「バイトテロ」といった悪ふざけの画像が投稿され、ネットで炎上する事例が発生しています。本人たちは深く考えずに面白がって投稿したつもりでも、一度炎上すると取り返しがつかない事態を招いてしまうのです。
悪ふざけのつぶやき「バカッター」
「バカッター」とは、ツイッター上で悪ふざけの画像を投稿する行為やその投稿者を指す言葉です。線路に侵入する、テーマパークでアトラクションから飛び降りるといった危険行為や、飲食店の醤油差しを口や鼻の穴に差し込む、商品用の冷凍庫に入るといった迷惑行為、衣料品店の従業員にクレームをつけ土下座で謝罪を強要した投稿などが炎上しました。
アルバイト従業員の悪ふざけ「バイトテロ」
バカッターの中でもアルバイト中の従業員の悪ふざけの投稿は「バイトテロ」と呼ばれることがあります。飲食店でハサミを天ぷらにしたり、食器洗い機を風呂に見立てて入浴したり、来店した有名人の姿が映った防犯カメラ映像を公開するなどの行為が実際に行われ炎上しました。実行役・撮影役に分かれて複数のアルバイト従業員が関わっているケースも珍しくありません。

炎上すると個人情報や画像が晒される
バカッターやバイトテロには短時間で批判が殺到して炎上します。炎上に加わる人の中には、問題の投稿や同じ投稿者の過去の投稿などから個人情報や場所などを割り出す「特定班」と呼ばれる人が存在し、炎上するとプライバシーに関わる情報がネット上に晒されるのです。
過去の投稿などから個人情報が特定される
ツイッターの場合、実名や居住地、学校・会社などを明かしていなくても、過去の投稿内容やフォロワーとのコメントのやりとりなどを調べれば本人を特定するヒントがたくさんあるのです。メールアドレスを他のSNSのアカウントにも使い回していれば、特定の内容はさらに詳しくなります。晒される内容は、実名や住所、電話番号、学校・会社、家族構成など様々です。
ぼかしなしの顔写真が出回る
炎上で実名や学校・会社名などが特定されれば、SNSのアイコンやブログの写真、学校・会社のホームページなどから顔写真が出回ることもあります。テレビや新聞の報道ではプライバシーに配慮してぼかしがかけられますが、ネット上では顔がはっきりわかる状態で掲載・拡散されることも多いです。

ネット上にデジタルタトゥーが残るとどんな影響が?
ネットで炎上してバッシングを受けると、個人情報や顔写真がネット上にどんどんコピー&ペーストで拡散され、完全に削除することは不可能に近くなります。「なぜあんなことをしてしまったのか」と後悔する時には、もう手がつけられない状態になっているのです。
投稿者も関係者もダメージを受ける
たった一度、面白半分で行った投稿が、投稿者の人生を大きく変えてしまいます。「名前を検索されると過去の失敗を知られるかもしれない」という不安が将来に渡ってずっとつきまとうのです。また、家族や関係者にも大きな迷惑をかけてしまいます。
投稿者の人生が変わってしまう
個人情報や顔写真が晒されれば、投稿者は社会的な制裁を受け、外を歩くのが怖くなるなど精神的にも大きなダメージを負います。退学・解雇などの処分を受ける可能性も十分考えられます。将来的には、投稿者の進学・就職先の面接官や仕事の取引先が名前を検索してデジタルタトゥーを発見する恐れもあり、やりたいことを諦めざるをえない場面も出てくるかもしれません。家族にも心配や迷惑をかけることになります。
店が閉店に追い込まれる
バイトテロでは、問題を起こしたアルバイト従業員が解雇されるだけでは事態が収まらないこともあります。炎上を知った第三者や顧客から「従業員の教育が足りない」などの批判が集まり、店舗が閉店に追い込まれたケースもあるのです。店舗の経営者に迷惑がかかるのはもちろん、他の従業員も職を失ってしまいます。さらに店舗に与えたダメージが大きければ、投稿者が損害賠償請求を受ける可能性もあります。
デジタルタトゥーが保存されるサイト
バカッターなどのデジタルタトゥーはどのように形成されるのでしょうか。まず、問題のある投稿を見つけた人がウェブページのアーカイブを「魚拓」として保存します。魚拓が海外サイトに拡散されると削除依頼が困難になり、火種がネット上に残りやすくなるのです。
「魚拓」と呼ばれるウェブアーカイブ
元の投稿が削除されても、事前に魚拓をとっていればほぼ原型をとどめた形で保存し、不特定多数に共有できます。「投稿者が炎上から逃げるのを許さない」「第三者が改ざんしていない状態を残せる」という点で支持されています。アーカイブサービスで有名なのが「ウェブ魚拓」というサイトで、他にも「archive.today」「peeep.us」などの魚拓サイトがあります。
海外サイトの場合は削除が難航
もし自分のバカッターの魚拓を削除したい場合は、魚拓サイトの管理人に削除を依頼します。しかし海外の魚拓サイトは言葉や法律の壁があり手続きが厄介で、削除依頼をしても難航する可能性が高いです。
炎上やデジタルタトゥーで苦しまないための予防策や対応策
バカッターやバイトテロの投稿者は、炎上したらどうなるかという想像力より注目を集めたい気持ちが勝っていたり、ネットは公共の場であるという意識が欠けています。炎上やデジタルタトゥーで苦しまないための予防策や、炎上後の対応策について紹介します。
ネットで投稿が炎上しないための予防策
スマートフォンの普及で、個人がネット上に情報発信する頻度は格段に増えました。若い世代には、毎日何度もSNSにアクセスし、思いついたら即投稿、というユーザーがたくさんいます。ネットで投稿が炎上しないためにはどんな点に気をつければいいのでしょうか。

投稿前に自分は冷静か考える
まず、投稿前には自分が冷静な状態かどうかを見つめ直すべきです。友達と盛り上がっている最中や、お酒を飲んでいるとき、非常に怒っているときはバカッターを生みやすい状態です。また、珍しい瞬間に出くわした時も「今すぐ発信したい」という衝動にかられやすいです。炎上時のリスクをしっかり把握し、投稿前には自分の心理状態を客観的に把握しましょう。
自分の個人情報が漏れていないか注意する
もし問題がある投稿をしてしまった場合、ネット上に特定班が拾える情報がたくさんあると傷は深くなります。日頃からネットは公共の場であることを意識し、SNSで個人情報や行動が筒抜けになっていないか、投稿の公開範囲は適切か、といった点に留意しておきましょう。
デジタルタトゥーが残った場合の対応策
炎上を引き起こしてしまったら、被害が大きくなる前に早めに対処することが一番です。初期段階では多くの批判が寄せられても反論せず、謝罪と反省に徹します。投稿やアカウントそのものを削除すると逃げたと見なされ、火に油を注いでしまいます。
サイト管理者に削除依頼
掲示板やブログなどに魚拓が出回ったり、個人情報や顔写真が晒されてしまった場合は、まずはサイト管理者に削除を依頼します。サイトごとに手続きのガイドラインが定められているので、所定の方法で依頼を行います。
削除依頼に応じてもらえない場合は法的措置も
サイト管理者にメールや専用フォームを通じて削除依頼を送っても削除されない場合は、「送信防止措置依頼書」という文書を送付します。それでも削除してもらえない場合は法的措置に移り、裁判所に「削除仮処分」を申し立てます。削除が実行された後はGoogleに対しキャッシュの削除依頼をしておくと被害拡大防止に役立ちます。
デジタルタトゥーはたとえ本人が死んだ後でもネット上に残り続けます。もし問題のある投稿をしてしまい対応や削除が手に負えなくなった場合は、ITに強い弁護士に相談してみてください。