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ネットの炎上

  • 2017年06月14日 | 4,700view

UCCのTwitterを使ったキャンペーン炎上事例とは?

ucc-twitter

不祥事の発覚をきっかけに批判が殺到する“炎上騒ぎ“が立て続けに発生し、社会問題になっています。最近はバカッター達が引き起こすものだけでなく企業によるそれも少なくないですが、中には多くのケースと異なる結末を迎えるものもあるのです。今回紹介する「UCCのTwitterを使ったキャンペーンの炎上事例」もその一つです。

UCCのTwitterを使ったキャンペーンの炎上事例

近年連日メディアで取り沙汰される“炎上騒ぎ”。バカッターによるものや企業の不祥事によるもの等様々ですがその多くは人々の心に負の感情を引き起こすものです。しかし今回紹介するケースでは最終的な人々の反応は少し違ったようです。

UCCのTwitterを利用したPR活動が炎上

UCC上島珈琲が2010年2月5日にTwitterを利用したキャンペーン活動を行い炎上した事例があります。発端は自動発信されたメッセージでした。当時UCC上島珈琲はコーヒーをテーマにしたエッセイなどを募集し表彰する「第11回UCC Good Coffeeキャンペーン(コーヒーストーリー大賞・コーヒーアート大賞)」を行っており、Twitterでの告知を試みます。

UCCは効率的に広告する為に「bot」と呼ばれるTwitter の自動送信機能を使用し、特定のツイートをしたユーザーに“コーヒーにまつわるエッセイとアートを募集中!エッセイで賞金200 万円!アートで賞金100 万円!締切間近!!”と特設サイトに誘導するメッセージを送りました。

キャンペーンは午前10時頃から開始。最初の30分は1アカウントのみのスタートでしたが徐々にアカウントを増やし、午前11時頃には全11のアカウント全てからメッセージを送信します。ところが効率的に告知したい意に反してメッセージの受信者からは「これはUCCのアカウントを偽装したスパムでは」との声が続出、ネット上で騒ぎになったのです。

他の炎上事例とは異なる結末

これに対しUCC上島珈琲は即座にアカウント削除等の策を講じ、キャンペーンを中止します。この対応によって一旦炎上は収まりました。

2時間後にはキャンペーン打ち切りに

「キャンペーンが批判されている」との一報を受けUCCは開始から2時間後の正午にはキャンペーンを打ち切り、メッセージの送信をストップします。その上で「今回の事態を深刻に受け止め、今後、社内管理体制並びに情報管理体制の徹底を図りたい」とするコメントを発表、謝罪しました。更に7日の午前11時頃には同社のTwitterアカウント『上島珈琲なう』に「我々の未熟さから皆様にご迷惑をおかけし、現在グループ社内で自分達の失敗について議論しており、週明けにはご説明の機会をいただくかと思います。今しばらく推移を見守って頂ければ有り難く思います。」とのツイートを投稿します。

迅速な対応に称賛の声も

注目すべきはここまでの一連の流れに対するユーザーの反応で、UCC側の迅速な措置を称賛するコメントや真摯な対応に対して「頑張れー」「応援してるよ」等のメッセージが送られたのです。こうしたユーザーの励ましのツイートを、キャンペーンの担当者は目頭を熱くしながら読んだと言います。

UCCの炎上は他社にも影響が及んだ

しかしこの炎上事例、本来ならUCC上島珈琲だけで収まって然るべきなのですが、実は全く関係のない会社にも批判が集まっていたのです。

他社にも“飛び火”

マーケティング炎上の翌日の6日、ネット上で「キャンペーンを請け負った代理店はどこか」と話題が上がり、ユーザーが詮索し始めました。そこにキャンペーンとは無関係のIT関連会社「サイバーエージェント」の名が挙がり批判が集まったのです。

“とばっちり”を受けていることを把握

サイバーエージェント社の技術部門担当取締役の宇佐見進典氏も自社が批判されている様子を見守っていました。しかし6日午後7時半頃、知人を通じて自社が関わっていないことを確認し、午後10時ごろ「やってないことを証明するのは難しいです」とつぶやきます。このツイートに対してユーザーが反応、次々にリツイートし徐々に同社の濡れ衣が晴れていきました。

「黙ったままだと仮説が事実化されていくという恐ろしさを目の当たりにし、やってないことは『やっていない』ときちんと言うことが重要と思った」と、宇佐見氏は振り返ります。

UCCの炎上が早々に“鎮火”できたワケとは

今回の事例では5日10時のキャンペーン開始から1時間で炎上、2時間程度でキャンペーンは中止しました。しかしその僅か2日後の7日には騒ぎは収まっています。ではなぜこれほど早くに炎上は収まったのでしょうか。

予め万全な準備をしていた

ひとつには、UCCがキャンペーンの前にリスクを想定し、回避する為に入念な準備を進めていたことが挙げられるでしょう。

ユーザーのつぶやきを監視していた

UCCはキャンペーンの開始から、Twitter上の「UCC」「上島珈琲」などの書き込みを監視していました。「Twitterは1人でやっていると心が折れることもある。別部署にオブザーバーがいた方がいいだろう」と考え運用を監視したり、つぶやきに関する相談を受ける体制にしたと言い、このことが結果として事態の把握を早めたと言えます。

緊急連絡体制が確立していた

加えてUCCは食品会社であるため、食品の問題等があった際等の緊急時に現場の情報がすぐに本部に届く体制も構築済みで、上島珈琲店なうであらかじめリスク対応のアウトラインを形成していたことも迅速な対応に大きく寄与したのです。

「現場の判断」が功を奏した

また、キャンペーンに携わっていたUCC上島珈琲の社員と“類焼”に対応したサイバーエージェントの社員それぞれが自己裁量・自己責任でツイートしたことも、素早く事態を収拾できた理由として挙げられます。

キャンペーン担当は「上島珈琲店なう」で説明

UCC上島珈琲のキャンペーン担当の社員は、サイバエージェントまで批判されていることを知り、騒動を受けて一次停止していた「上島珈琲店なう」のアカウントで事情を説明します。他の選択肢として翌7日にもう一度事実関係をプレスリリースして説明する手段やTwitterアカウントを再取得して説明する手段を考えたものの、他社の話を自社のプレスリリースで説明するのはおかしいしTwitterで炎上した後に新たにTwitterアカウントを取ることも避けるべきと判断したのです。担当者は本来なら広報を通すべきところ、責任を取るつもりでそれを省き自分の裁量で行ったと言います。

サイバーエージェント側の社員も自己判断で説明を投稿

サイバーエージェント側の宇佐美氏も“消化”のツイートをする際自社に関する内容をネットに書き込むときは広報を通すのが筋とも考えたものの、「手続きが面倒と思った。トラブルがあれば、自分が怒られればいい」と、自分で責任を取るつもりでツイートしたとコメントしています。

UCCは今回の失敗を糧に勉強会を開く

また同社は、炎上はしたものの的確な対応により迅速に騒ぎが鎮まった当事例の一連の流れを教訓にすべく、その後勉強会を開きました。UCCがソーシャルメディアを利用したマーケティングを行ったのはこれが初めてで、Twitterの特性を理解しないままにキャンペーンに踏み切ってしまったと担当者は反省します。

Twitterマーケティングについて企業が学べること

当ケースの成功と失敗から企業がマーケティングにソーシャルメディア、特にTwitterを利用する際の心掛けや注意すべき点が見えてきます。

Twitterの特性を理解する

担当者も言及する通り今回の失敗はTwitterの特性を理解していなかったことが大きいでしょう。個人で使うときはまだしもマーケティングに利用する際はメディアやユーザーの傾向までを掴んでおく必要があると言えます。

ユーザーはタイムラインを“汚される”ことを嫌う

Twitterでは自分のアカウント宛てに送信されたツイートは「タイムライン」に集まります。ユーザーにとってここは“家”の様な感覚であるため、無意味に多くのつぶやきで埋まることを嫌う傾向にあります。だからこそ一方的に広告を送信した当ケースではユーザーの心の中に“負”の感情が巻き起こった、と分析することができるのです。

ソーシャルメディアとマスメディアの違いを把握する

加えて、Twitterを始めとするSNS等を利用した“個人に向けて”の広告とマスメディアで“不特定多数の人に発信”するそれとのあるべき姿の違いを認識しておくことも重要でしょう。

ソーシャルメディアでは“無機質な広告”は逆効果

マスメディアを使った“マスマーケット”では今回の事例の様に多くの人に同じ広告を送っても批判が集まることは無かったでしょう。しかしソーシャルメディア、殊にTwitterはユーザー一人ひとりと対話するコミュニティーツールである故に担当者が個人のつぶやきに耳を傾けながら発信する姿勢が重要と言えます。

当ケースのように無味冷淡な内容を自動で大量に送り付けてしまっては失敗することがあるのです。ウェブマーケティングでは不特定多数の人を対象に無造作に宣伝をするのではなく、消費者一人一人と向き合って広告を発信すべき時代がやってきているのかもしれません。

通常、企業の炎上事例が起こればイメージダウンになりますが当ケースでは迅速かつ真摯な対応によって最終的にはむしろ企業イメージが上がりました。「燃やす側」のネットユーザーも個々は一人の人間であり、その「怒り」も企業の姿勢次第では鎮まることを体現した事例と言えるでしょう。

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