「発信者情報開示に係る意見照会書」ってどんなもの?もしも届いたら弁護士に相談を!
インターネットが身近になり、誰もが掲示板やSNSに書き込みができる世の中になりました。しかし、書き込みをしたことで第三者から権利侵害を訴えられ、プロバイダを通じて「発信者情報開示に係る意見照会書」が送られてくることがあります。これは一体どのような書類で、どのように対応したらいいのでしょうか。対処方法について解説します。
発信者情報開示に係る意見照会書とは
インターネットに書き込みをする人は誰でも対象者になる?!
「発信者情報開示に係る意見照会書」(以下「照会書」)は、ネット上でのプライバシー侵害を訴える人がプロバイダに対して発信者情報開示請求をしたときに、プロバイダなどが送ってくる書類です。インターネット掲示板やSNSなどによく投稿する人は誰でも、この書類を受け取る可能性があります。
発信者情報開示請求の制度はなぜあるの?
発信者情報開示請求とは、インターネットプロバイダなどが行うネット投稿の削除や、発信者の情報開示について定めた「プロバイダ責任制限法」による手続きです。そもそもどうしてこんな法律があるのでしょうか。
インターネット情報の特徴とは
一般的に、インターネット上の情報は一度発信されると転載されたり拡散されたりして半永久的に残ってしまいます。掲示板やSNSに名誉棄損やプライバシーの侵害などにあたる悪質な書き込みがされると、個人や企業の信頼が失墜したり、営業妨害につながったりすることもありえます。そのため、インターネットの情報は決して軽視できるものではないと言えるでしょう。
インターネットの情報を削除することは簡単ではない
一旦ネット上に出てしまった情報を削除しようとしても、投稿した人がわからなかったり、掲示板の管理者に削除をお願いしても対応してもらえなかったりすることが往々にしてあります。そのため、書き込みがいつまでも残り続けてしまい、被害がますます拡大してしまうのです。
プロバイダ責任制限法とは?
書き込まれた情報をサイト管理者やプロバイダが一方的に削除すると、発信者が「勝手に消された」と訴えてくる可能性があります。とはいえ、他人を誹謗中傷するような書き故小見を放置していては権利侵害が拡大してしまいます。そのような社会からのニーズにこたえてできたのが「プロバイダ責任制限法」なのです。
プロバイダ責任制限法ってどんな法律?
プロバイダ責任制限法とは、特定の個人や団体などを誹謗中傷する書き込みがされた場合に、以下の2点について規定したものです。
- サイト管理者やプロバイダ(以下「サイト管理者等」)の損害賠償責任の制限
- 人権侵害を受けた者の発信者情報開示請求権
①損害賠償責任の制限とは
サイト管理者等は、原則として誹謗中傷の書き込みをそのままにしていても責任を問われない一方、当該情報を削除した場合は発信者に対して責任を負うことになります。しかし、例外的に書き込みの内容が第三者の権利侵害に当たるときと、発信者に対して削除してよいか照会を行い7日以内に「同意しない」旨の返答がないときに限り、サイト管理者等は損害賠償責任を免れることが可能です。
②発信者情報の開示とは?
インターネットの投稿で人権侵害を受けた場合、発信者に損害賠償を求めることができます。そのためにはまず発信者を突き止める必要があるため、サイト管理者等に発信者の情報を開示するように請求することが必要です。通常は任意で書面にて請求しますが、サイト管理者等が開示に応じない場合は裁判になることもあります。
どんなときに開示請求できるの?
権利を侵害されたとする第三者が開示請求をするには2つの要件があります。
- 情報の流通で、権利が侵害されたことが明らかであること
- 損害賠償請求のためであるなど開示を受ける相当の理由があること
「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたら、どうする?
日常的にインターネット掲示板やSNSに書き込みをしていると、たとえ悪気がなくても書き込んだ内容が第三者に「人権侵害だ」と思われる可能性は否定できません。そのような場合、ある日突然「照会書」が送られてくることがあります。
発信者情報開示に係る意見照会書とは?
投稿によって権利を侵害されたという第三者がいても、訴えが正しいとは限りません。また発信者にも言い分があるはずです。プロバイダ制限法では、開示請求があった場合、サイト管理者等は発信者に照会書を送って意見を聞かなければならない旨が定められています。
照会書の送り主は誰?
照会書はサイト管理者等が、第三者の開示請求を受けて送ってくるものです。通常、発信者が使用しているプロバイダのことはわからないため、一般的な流れとして、第三者はまず掲示板の管理者に開示請求をし、IPアドレスから経由プロバイダを特定してプロバイダに開示請求をします。
照会書はどんな内容?
決まったフォーマットはありませんが、プロバイダ責任制限法関連情報サイトにフォーマットが用意されていて、これが使用されることもあります。照会書の主な内容は以下の通りです。
- 発信者情報の開示に同意しない場合は、理由を具体的に書いて回答すること
- 発信者が同意しない場合でも、プロバイダなどの判断で開示することがあること
どうやって回答したらいいの?
法律関係の仕事をしている人でない限り、普通はこのような法的な書類を書いた経験はなかなかないでしょう。照会書には通常、提出期限が設定されているため、焦って間違った回答をすることの無いよう、回答の仕方の流れを知っておきましょう。
回答期限はいつまで?
法律で決まっている期限はありませんが、一般的には2週間以内に回答するように求められることが多くなっています。照会書内に回答期限が明記されているので必ず確認しましょう。
無視するとどうなるの?
照会書を無視することに対する罰則はありません。ただしその場合、発信者の言い分は聞かずにプロバイダなどの判断のみで開示が行われてしまうこともあるので、注意が必要です。
発信者情報が開示されないこともあるが・・・?
プロバイダが、「開示する相当の理由が無い」もしくは「権利侵害が明らかでない」と判断した場合は、発信者情報は開示されません。ただしが、サイト管理者が開示に応じないとして、人権侵害を訴える者が裁判所に開示を求めて仮処分の訴えを起こすことがあります。仮処分の決定が下った場合は、ほぼ確実に発信者情報が開示されることになります。
発信者情報開示に係る意見照会書が届いたら、ネットに強い弁護士に相談
照会書が届くと、裁判になったり、損害賠償を請求されるかもしれないと心配される人もいるでしょう。しかし、人権侵害の被害が発生しているかが怪しいこともあります。そのため、照会書が届いたらまずはインターネットに強い弁護士に相談することが大切です。
発信者情報が開示された後は何が起こる?
そもそも発信者情報の開示請求をするということは、名誉棄損やプライバシーの侵害などによる損害賠償訴訟の準備をしている可能性が高いです。まずは弁護士など法律の専門家と対応を検討することが大事です。
開示される情報はどこまで?
発信者情報開示請求によって開示される情報は以下の5つです。
- 氏名
- 住所
- メールアドレス
- IPアドレス
- 情報が送信された年月日と時間
裁判になることもある
発信者情報が開示されると、被害者が損害賠償を起こすことがあり、敗訴すると賠償金を支払わなければなりません。また、書き込みが特に悪質と判断された場合は、名誉棄損罪が成立し、罰せられる可能性もあります。
発信者情報開示に係る意見照会書が届いたら落ち着いてまず弁護士に相談
照会書が届いたら内容を確認した上で、一人で悩まずにインターネットに強い弁護士に相談し、どのように対応すればよいか検討することをおすすめします。
自己判断するのは危険
権利を侵害されたとする被害者の言い分が必ずしも正しいとは限りません。一般的に見て特に問題の無い書き込みなどに対して、過剰反応していたり言いがかりをつけていたりする場合もあり得ます。ただし、言いがかりと決めつけて無視するのは非常に危険です。
弁護士であれば適切な対応方法をアドバイスしてくれる
照会書に自己判断で回答してしまうと、内容によっては自分の情報が相手方に開示されてしまうこともあるため、回答内容については弁護士のアドバイスを受けましょう。弁護士であれば、適切な回答方法を伝授してくれます。また、照会書が届くのは相手方が訴訟を検討している可能性があることを意味します。裁判になった場合に備えるためにも、弁護士と一緒に対応していくことが欠かせません。
今日では、誰でも手軽にインターネットへの書き込みができるようになりました。しかし、書き込み内容によっては第三者から権利侵害であるとして訴えられる可能性もあります。その際は、早めにインターネットに強い弁護士に相談するようにしましょう。