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ネットの炎上

  • 2017年07月31日 | 15,862view

グルーポンのバードカフェ謹製おせちの炎上事例を見てみよう

おせち

「炎上騒ぎ」と言えば、ネット上に不適切な書き込みを投稿した“バカッター”個人に非難が殺到して収まりがつかなくなる事例をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし中には企業が批判の矢面に立たされる事例も少なくないのです。そこで今回は、「グルーポンのバードカフェ謹製おせちの炎上事例」を解説します。

グルーポンのバードカフェ謹製おせちの炎上事例

ネットに不適切な投稿をしたことで世間から非難を浴び騒ぎになる“炎上”。幾度となく繰り返されるバカッター達の悪ふざけは、他者に直接的、間接的に損害を与える行ためで決して許容できるものではなく、由々しき問題として連日議論されています。しかしこうした騒ぎは企業による問題行動が発端となることも少なくありません。今回紹介する“グルーポンのバードカフェ謹製おせちの炎上事例”もその一つで非常に悪質なものでした。

写真と異なる“質素過ぎるおせち”で炎上

クーポン共同購入サイト“グルーポン”で販売していたおせちの実際の内容が宣伝の写真と大違いで、購入者が激怒し実物の写真を投稿、炎上騒ぎになりました。

写真では豪華だったが届いたのは質素なおせちだった

事の発端は2010年から翌2011年にかけての年末年始。アメリカに本社を置き当時日本に進出したばかりの格安チケット販売サイト“グルーポン”に横浜の店「バードカフェ」が「謹製おせち」の名で33品目入の豪華おせち限定300セットを、定価21,000円の半額の10,500円として販売していました。お買い得な値段に加え、当時非常に流行していたグルーポンでの販売であったことから多くの人が購入します。ところが元旦までに届かない上おせちの中身はネットに掲載されていたそれとは似ても似つかぬ質素なものだったのです。

食材はおろか最低限の気配りもされていない

品数も25,6しかなく内容も大幅にグレードダウンしていたと言います。仕切りや盛り付けも雑で黒豆はホイルや別途の入れ物に入れられることなく、仕切りの中を転がっていたり、本来なら四は「死」を連想させるため避けなければならないところ仕切りを四つに区切る等、縁起への配慮も全くされていませんでした。総じてとても一万円の価値は無い代物だったのです。怒った購入者はネットにこの事実と証拠写真を投稿、騒ぎになった訳です。最終的には返金がなされたものの、購入者は後味の悪い思いをしたと言います。

何故この様な事態が発生したのか

バードカフェは“毎年同じような内容で飽きるおせち料理に新風を!”のキャッチフレーズでオープンした「外食文化研究所」が運営していた店ですが、横浜市内ではかなりの人気店だったと言います。ではなぜこのような事態が発生してしまったのでしょうか。そこにはバードカフェ側の数々の誤算からくる混乱があったようです。

販売の直前で受注を500食に増やした

事件から遡ること2か月、2010年10月のことでした。当時バードカフェの社長だった水口憲治氏に、とあるマネージャーの男性がおせち料理の販売を持ち掛けます。それは21,000円の33品目入豪華おせちを半額の10,500円で限定300セット販売をする内容でした。その後11月末の試作時点では予定通りのものが完成したものの、販売直前になってマネージャーが独断で受注を500食に増やしてしまったのです。更にそれを4日半で全て調理する予定だったと言います。

不測の事態に見舞われ目論見が外れた

バードカフェは500食をマネージャーとコック、ウエイターの3人で作るつもりだったようですが、一般的な目安としておせち料理500食を作るにはスタッフ60人で挑んでも2日半は掛かり、明らかに人手が足りませんでした。また3段重ねのおせち料理を500食作るためには1500個の“重”が一面に並ぶ広さが必要でしたが、もともとバードカフェは小規模の店舗でありそれだけの面積は確保できませんでした。更に事実か否かは定かでありませんが、連続稼働で厨房のオーブンは故障、食材の発注ミスという誤算も加わり、販売サイト側にキャンセルを申し出たものの退けられたとバードカフェは主張しています。

当事例の問題点を深く掘り下げる

この事例に関しては各メディアで大々的に取り上げられましたが、実際に問題になった点は具体的にはどういったことなのでしょうか。深く掘り下げていきます。

バードカフェ側の問題と責任は

実際に消費者に届けられたおせちは前述した内容以外に法的にも複数の問題点がありました。バードカフェ側の何処に落ち度があったのか、詳しく見ていきましょう。

食品偽装問題

当事例で最も重大な問題の一つが食品偽装の問題でしょう。カタログ写真と実物が大幅に違うとして炎上した訳ですが、例えば本来の献立では「生ハムとカマンベールチーズ」のところ市販の生ハムと銀紙で包装されたクリームチーズ1Pになっていたり「肉巻きのロースト」のはずが市販品のチキン八幡巻きが入っていたりと食材そのものも違っていたものも多かったのです。

衛生面の問題

また通常おせち等生鮮食品を含む料理はクール便で運搬しなければならないのですが、当事例では通常便で配送されていたため極めて不衛生な状態だったのです。例えば「フランス産シャラン鴨のロースト」等はたたきに変更されていただけでなく、通常便で配送されため腐った状態で届く様な有様でした。この事態を重く見た神奈川県と厚生労働省は「謹製おせち」の製造元工場と関連会社に立ち入り捜査を実施しました。

クーポン共同購入サイトグルーポンにも問題があった

更に当事例ではグルーポンにも責任があると言えます。商品を安く購入できるクーポン共同購入サイトの仕組みを踏まえた上で、今回のケースはどこに問題があったのか見ていきましょう。

クーポン購入サイトとは

クーポン共同購入サイトとは元来企業等が商品を出品、一定期間内にあらかじめ設定した購入者数に満ちれば利用者は格安で購入できるサイトです。利用者はサイト運営者を通じて代金を前払いする仕組みで、販売側の企業は一時期に大量に商品をさばくことができるため大幅な割引が可能になる訳です。

景品表示法違反の問題

しかし当ケースでは実際には2万円で販売している商品でないにも関わらず、割引率を高く装うために偽装表示していたのです。このことが明るみになりグルーポンは景品表示法違反の疑いで消費者庁による指導や改善命令を受けることになります。

グルーポンのバードカフェ謹製おせちのその後

多くの消費者の怒りを買い、一時期世間を騒然とさせたこの事例は当時のバードカフェ社長の水口氏が「企画として面白そうだから」と安易な気持ちで進めたことが原因で発生したと言いますが、その後関係各社はどうなったのでしょうか。

バードカフェは閉店

事件後、バードカフェは購入者への返金等に充てるため3000万円の費用を工面せねばならず、閉店に追い込まれました。

テレビ番組で事件を振り返るも真摯な反省を見せない

事件から4年後の2015年、テレビ番組で食品偽装問題の特集が組まれた際、一例として本ケースが取り上げられました。このとき一連の事件について水口社長は「そもそも、500食もおせちを作るという実力がなかったので、完全におせちというものをなめていた。軽く考えていましたね」といった発言に始まり、「よく覚えていない」「お弁当を作る感覚だった」等と消費者を馬鹿にしたコメントを残しています。

懲りずに他の店を立ち上げる

またそれだけでなく彼は懲りずに新しく会社を立ち上げて飲食店を13店舗経営しており、年商7億円の「SURF CAPP Inc.」という飲食店経営者に転身していると言います。13店舗で年商7億円はおよそ儲かっているとは言い難い数字ですが、ネット上では「あれだけの騒ぎを起こしておいて、よくもノコノコと。」等批判的な意見が出ています。

グルーポンは審査基準を強化、国も対策へ

実はこの事例が起きる以前からクーポンが使えないと言ったトラブルが相次いでいました。そのためグルーポンは審査基準を改め、消費者庁も対策を講じました。

グルーポンは審査強化、再発防止へ

グルーポンはそれまで30項目だった出品業者の審査基準を200項目に増やし厳格化した他、不当な価格表示の監視を強化したと言います。その上で「二度と同様の事件が起きない様社内体制を整えている。品質の高い商品をお客様と約束した日時までにお届けすることを最重要事項としてやっていきたい」等とコメントしています。しかしその一方で事件以来出品を躊躇する業者も減り、業界全体が徐々に衰退してきているのも事実です。

消費者庁は業界の指導に乗り出し健全化を図る

また国も業界の健全化を図るために対策を打ち出しました。業界団体を立ち上げ審査のルールを統一化したり、クーポンで購入できる商品やサービスの審査を外部に委託したりする動きが出ています。

バードカフェ謹製おせちのケースから企業炎上について言えること

消費者の証拠写真の投稿から事態が発覚、炎上騒ぎになったこの事例から、企業炎上について俯瞰した時、いろいろなことが見えてきます。

“怒る必要のない人”が怒り、炎上が大きくなる

この事例は確かに悪質と言えます。宣伝写真と大幅に違う内容の商品を売る詐欺まがいの行ために人々が嫌悪感を抱くのは当然です。しかし実害を受けたのは実際に購入した人のみであり、批判に加わった大多数の人々は被害を受けていないはずなのです。

利害関係なしの第三者によって炎上は加速

炎上するような行動をとる企業が悪いのは言うまでもないことですが、当ケースに限らずインターネットの炎上では本来直接の利害関係に当たらない“怒る必要のない”人も批判に加担し、そのことが炎上騒ぎを一層大きくしていると言えます。企業の不祥事等がネット上で一方的に批判される事態は何もここ最近に始まったことではなく、何十年も前からありました。

しかしSNSの普及により、第三者が「リツイート」や「シェア」によって事件を容易に拡散出来るようになったことで炎上事例が爆発的に増加していったのです。当ケースはほんの氷山の一角で、拡散されなかった類似の事例は他にも存在することが予想されます。

こうした消費者を馬鹿にした様な企業の悪行は無論許されざることですが、明るみに出ていないだけでしばしばあると思われます。この手のトラブルを消費者側が防ぐのは困難と言え、国や仲介業者等による消費者保護のための何らかの策が待たれます。

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