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ネット風評被害の恐怖

  • 2016年08月23日 | 5,240view

会社経営における風評被害のリスクと損害

頭を抱える

風評被害が招くリスク

売り上げの低下

風評被害が招くリスクとして一番大きなものは、やはり売り上げの低下でしょう。過去に起こった風評被害で売り上げが低下した例をいくつかご紹介します。

カイワレ大根事件

1996年に病原菌性大腸菌O157による食中毒が発生し、死者が出るという出来事がありました。厚生省(当時)は「原因としてカイワレ大根が疑われる」と発表したことで、全国でカイワレ大根が売れなくなりました。農家の中には自殺する人が出たほどです。

その後の立ち入り検査でO157は検出されず、当時の厚生大臣だった管直人氏がカイワレ大根をテレビカメラの前で食べる様子を報道していました。このときは風評被害を受けた生産業者らが国に対して損害賠償を求める訴訟を起こし、国が敗訴しています。

ダイオキシン野菜事件

1999年にテレビのニュース番組で、埼玉県所沢市の野菜から高濃度のダイオキシンが検出されたと報道されたことで、所沢産の野菜は市場から閉め出されました。実際は野菜ではなく茶葉だったこと、また茶葉は乾燥しているためダイオキシン濃度が高くなることがあるが、実際は問題ない量だったとわかりますが、野菜農家は大きな被害を受けました。

佐賀銀行の取り付け騒ぎ

2003年にひとりの女性が「佐賀銀行が近々倒産する」というメールを送ったことから、噂がアッという間に広がり、佐賀銀行に預金していた多くの人が引き出しに訪れるという取り付け騒ぎが起こりました。短期間に約500億円が引き出されたとのことです。

企業イメージの低下

企業は信用が第一です。しかし、ひとたび風評被害が流れると、企業イメージはすぐに低下し、それを挽回するのは並大抵のことではありません。

マクドナルドは2014年にチキンナゲットに使用期限切れの鶏肉が使われていたことを発端に、異物混入事件が相次ぎました。それによりマクドナルドのブランドイメージは低下する一方で、過去最大の218億円という赤字になってしまいました。これは風評被害ではなく、実際に起こったことですが、それでも企業イメージの低下は大きな損害を与えます。風評被害は企業にとっては致命傷になるのです。

そのためにも、風評被害の対策はしっかりとしておきましょう。

閉店に追いやられることも

コンビニや飲食店などでアルバイトが勤務時間中に悪ふざけをしている様子をスマートフォンなどで撮影し、自分のツイッターに投稿したところ、それがアッという間に広がってしまい、閉店に追いやられたケースが相次ぎました。店内は清掃や消毒をし、衛生面では問題はないのですが、顧客離れがひどく、営業できなくなってしまったのです。

また、悪意の書き込みをされた店舗が閉店したケースもあります。これは「ネガティブキャンペーン」と呼ばれるもので、特定の店舗の悪口をネット上のあちこちに書き込むというものです。閉店した店舗には、「ネガティブキャンペーンによる風評被害が原因で閉店しました」という意味の貼り紙がありました。

このように風評被害が招くリスクはとても大きく、企業生命を脅かすほどです。カイワレ大根やダイオキシン事件はネットが普及していない時期ですが、それでもこれだけ大きな被害を受けています。現代は小さいうわさも、すぐに大きく広がっていきます。ネットでの風評被害を出さないことが大切ですが、外部の要因で発生するケースもあるため、自社の努力だけでは限界があります。

風評被害の損害

風評被害を受けた場合、損害額はどれくらいになるのでしょうか?

実は、驚くほど高額になります。

風評被害の種類

まず風評被害の種類を考えてみましょう。

風評被害を受けると売り上げが下がるという直接的な損害があります。

過去には病原性大腸菌O157の集団感染が発生し、原因はカイワレ大根の可能性があると報じられた結果、カイワレ大根が売れなくなり、業界全体が大きな打撃を受けました。これが直接的な損害です。

さらに、経営悪化や就労不能を招くことも風評被害の損害に当たります。先のO157の件ではカイワレ大根を生産していた農家の経営が立ち行かなくなり、自殺したケースもあります。そうでなくても、経営悪化を招き倒産したり、従業員の解雇や必要な措置を取るために費用がかかるというケースもあります。

そして、検査費用がかかります。O157や鳥インフルエンザ、最近では原発事故による放射能汚染の有無を、取引先などに求められて検査をするのです。その費用も風評被害の損害額に当たります。

風評被害の損害額は膨大

風評被害が及ぼす損害額は想像以上に大きなものになっています。

東北大震災時の原発事故の影響で、福島県の農業は風評被害を受けました。震災の前年の2010年の福島県産の野菜(キュウリ、サヤエンドウ、ブロッコリー、アスパラガス、トマト、イチゴ、サクランボ)の1Kg当たりの単価は8602円で、全国平均よりも高値がついていました。しかし、震災があった2011年は6259円で全国平均の92%に下落、さらに2012年は上昇するどころか4474円で震災前の半値になってしまいました。

また、福島県では観光産業でも打撃を受けています。実際は受け入れが可能なのに原発や震災の影響で宿泊できない、被災地に行くと放射能で健康被害を受けるという風評が広がり、修学旅行をはじめとする旅行のキャンセルが相次ぎました。その損害額は約74億円にものぼります。

経営破たんを招くケースも

風評被害から経営破たんを招くケースもあります。

2001年9月11日に発生したアメリカの同時多発テロ事件の後は、アメリカに出入国する人が激減しました。もちろん海外旅行は大きな影響を受けます。その結果、アメリカン航空とユナイテッド航空は経営が悪化し、大規模なリストラを余儀なくされました。またスイス航空とサベナ・ベルギー航空は経営が破綻しました。日本でも日本航空と全日空は旅客収入が約107億位円も減収したとのことです。

テロはアメリカで起こったのですが、米軍基地があるという理由で沖縄旅行のキャンセルも相次ぎました。沖縄への修学旅行は8割がキャンセルされたのです。

2015年2月現在で世界各地でテロが相次いでいます。安全を確保するのは大切ですが、報道が不安をあおって風評被害が生まれる可能性も考えられます。

風評被害はささいなことで生まれる

震災やテロ、集団食中毒など大きな出来事で風評被害が生まれることもあれば、実にささいなことで起こる場合もあります。

例えばテレビの健康番組で「○○が体にいい」と紹介されれば、翌日にはその食品がスーパーから消えるほどに売れるという現象が起こります。その逆で「□□は肥満になりやすい」「△△は血圧が上がる」と紹介されると、その食品は売れなくなってしまいます。

つまり、風評被害は自社の努力とは関係なく起こり得る可能性があるということです。

さらにイメージダウンや信頼の低下という大きなダメージも受けてしまいます。もし、風評被害を受けた場合は、まずネットの対策を速やかに実施しましょう。悪い評判が広がるのを少しでも早く食い止めることが大切です。

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