法人個人

ネットの豆知識

  • 2017年10月17日 | 5,717view

一般ユーザーが気を付けるべきネット上の犯罪行為

ネット犯罪

インターネットの普及は私達の暮らしに様々な利便性をもたらしました。しかし同時に、ネット上での軽率な行動が法律違反になるケースも少なからず存在し、法律を知らずに使用していると大変なことになる可能性があるのです。そこで今回は、一般ユーザーが気を付けるべきネット上の犯罪行為について法的観点から解説します。

一般ユーザーが気を付けるべきネット上の犯罪行為

インターネットはもはや社会インフラとして完全に定着したと言え、私たちの暮らしには不可欠です。しかしその利便性の陰にはリスクも潜んでおり、知らぬ間に犯罪行為をしてしまっているケースも少なくありません。

著作権侵害

その中でも特に陥りがちなのが、近年動画投稿サイト等を中心に物議を醸している“著作権侵害”の問題でしょう。
著作権とは、“知的財産権”の一種で創作した「著作物」に発生する権利です。この権利は著作物から発生する利益等を著作者が独占的・排他的に支配できる、即ち他者による無断での著作物の複製・利用を制限できる権利です。「著作物」とは“思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの”とされています。従って音楽や絵画、写真や小説等、著作物に該当するものは実に多岐に渡ることになります。

著作権は細かく分かれる

また一口に著作権と言っても「著作物を印刷、写真、複写、録音、録画等の方法によって複製する権利」である“複製権”や、「自分の著作物の内容やタイトルを自分の意に反して勝手に改変されない権利」の“同一性保持権”、「公衆によって直接受信されることを目的に著作物を送信する権利」“公衆送信権”や“送信可能化権”、「映画の著作物の複製物の販売や貸与をする権利」“頒布権” 等細かく分かれています。内、インターネットで特に問題となるのは複製権、公衆送信権、送信可能化権で、これらにまつわる著作権違反は私達の身の周りでも横行していると言えます。

違法アップロード

例えば近年各メディアで取り沙汰される、“違法アップロード”の問題がそうです。著作権のある映像や音楽等のコンテンツを著作者に無断でネットに投稿すると、法律違反になります。

ダウンロードも違法

テレビドラマやアニメ等が動画投稿サイト『youtube』等に投稿されるケースは非常に多いですが、著作権のあるコンテンツを無断でアップロードする行為は法律違反に当たります。まず著作権者の権利として複製権(著作権法21条)、公衆送信権(同法23条)の侵害に当たり、更に著作隣接権者の権利として録音・録画権(同法91条)送信可能加権(同法92条の2項96条の2項)の侵害に、加えてコンテンツが映画であった場合には頒布権(同法26条)侵害に該当します。勿論違法アップロードされた動画をダウンロードした場合も違法です

閲覧のみは“グレー”

閲覧するのみの場合の違法性の有無は専門家の間でも見解が分かれます。と言うのも、YouTube等の動画サイトは「ストリーミング再生」の形式で配信されるのですが、この形式では閲覧する際動画がスムーズに再生される様「キャッシュ」と呼ばれるパソコン内の一時保存場所に“ダウンロード”するためです。ストリーミングによるダウンロードは著作権法47条の8「電子計算機における著作物の利用に伴う複製」により著作権者の許可は不要とされていますが、解釈によっては違法とされるケースもあるので違法コンテンツは見ないのが無難でしょう。

罰則として懲役刑を科されることも

著作権違反の罪で民事訴訟を起こされた場合差し止めや損害賠償、名誉回復措置等が請求されることになります。更にこれに加えて権利侵害罪として10年以下の懲役と1000万円以下の罰金のいずれかまたはその双方を科すという罰則が設けられています(著作権法119条1項)。法人の場合には3億円以下の罰金刑が科せられることになっています(同法124条)

誹謗中傷は名誉棄損罪や侮辱罪に当たる可能性がある

憲法で保障されている表現の自由の考え方からは、誰でも自由に批判してよいことになっていますが批判された者は自由に反論することができるとされています。これは“モア・スピーチ”即ち言論にはより多く(モア)の言論(スピーチ)で対抗するべしとする考え方に基づいています。しかし軽率な書き込みが犯罪行為に該当するケースも少なくありません。

名誉毀損・誹謗中傷

人の名誉を傷つける書き込みをインターネットに投稿すると名誉棄損罪に問われることがあります。名誉毀損は公然と事実を摘示し人の名誉を貶める行為ですがネット上での誹謗中傷も特別な法律が存在する訳ではなく、通常の刑法に照らして違法性が判断されます。

誹謗中傷が傷害罪になることも

名誉毀損罪は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する(刑法第230条)」と規定されています。例えば「このタレントは麻薬を使用している」等と根拠なく書き込みをした場合は名誉棄損罪に問われる可能性があります。

ただし表現の自由との兼ね合いから、『1、摘示した事実が公共の利害に関する事実であって、2、公共の利益を図る目的でなされたものであり、3、その事実が“真実”であるか真実性の証明がなくても真実であると信じる相当の理由がある』場合には名誉棄損罪には当たらないとされています。また誹謗中傷が悪質で、それが原因でノイローゼやうつ病等を発症した場合は「傷害罪」になることもあります。

特定の企業を攻撃する様な行き過ぎた批判の場合違法になることも

では購入した食べ物に対する意見として「この製品は変な味がする」と発言したケースではどうでしょうか。この場合は「侮辱罪」に当たるか否かが問題になります。確かにこの様な発言は一般的に侮辱と見なされますが、侮辱罪は公然と“人や法人”を中傷することが要件となっています。故に批判した内容が商品即ち“物”に尽きる当ケースでは侮辱罪には該当しません。但し、特定の商品の欠点をあげつらって特定企業への攻撃の姿勢で行き過ぎた批判になれば、侮辱罪に問われる可能性もあります。

性的な画像等を流すとわいせつ物頒布罪や名誉棄損罪に問われる可能性も

また猥褻な画像等を公表するとリベンジポルノ防止法や児童ポルノ禁止法等に抵触し、わいせつ物頒布罪や名誉棄損罪に問われることがあります。

許可なく性的画像を公表すると違法

別れた恋人等のプライベートな写真や動画をインターネットに流出させることを「リベンジポルノ」と言いますが、その名の通り復讐の目的でLineやTwitter等で画像を流す行為がここ数年急増し問題視されていました。そこで平成26年に「リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)」が制定されました。この法律の制定以前は名誉棄損罪や児童ポルノ禁止法、わいせつ物頒布罪で立件していたのですが児童ポルノ禁止法では被害者の年齢が18歳未満に限られ、名誉棄損罪でも社会的地位を貶めることの立証が難しくなかなか逮捕には至らなかったのです。リベンジポルノ法が適用されるのは人物を特定できる形で、撮影対象者の同意なく不特定多数に提供した場合です。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

“自撮り”でも違法?

また注意しなければならないのは、この様なわいせつ画像は自分撮り(自分で撮影)したものでも違法になり得る点です。ここ数年女子中学生や女子高生がSNS等で知り合った男性に裸の写真を要求される事例が頻発していますが、こうした被害の増加を受け2017年2月21日に、東京都では全国初の自撮り規制に向け条例改正も含めて検討に入りました。未成年の少女に自画撮りのわいせつ画像や動画を要求する行為自体も”児童ポルノ法違反”とする動きがある様です。

迂闊な行動が犯罪行為に当たることも

インターネットでは誰でも簡単に利用ができ、気軽に書き込みができます。また近年流行しているオークションサイトや転売サイトもその便利さ故に安易に利用してしまいがちです。しかし迂闊な行動が実は犯罪行為に該当しているかもしれないのです。

ネット炎上と風説の流布

近年急速に普及したTwitterやFacebook等のSNSにバカな投稿をして批判が殺到する「炎上」が問題となっているのは、説明の必要もないことでしょう。ではこうしたバカッター達の投稿は、犯罪行為になるのでしょうか。

業務妨害罪に問われる可能性がある

従業員が業務用の冷蔵庫に入ったり、不衛生な写真をネット上に投稿して批判が殺到する事例が後を絶ちません。炎上騒ぎになった場合、実務と風評の両面で店に損害を与えたとして当事者が損害賠償請求されることがありますがこうしたケースは実はネット上でその事実が広まることによる企業のイメージダウンや風評被害が圧倒的に大きいのです。場合によっては業務妨害罪にも問われ兼ねません。多くの場合店側の管理責任や利益を上げている側面があること、問題行動をした人物の支払い能力等が加味され実際に請求される額は微々たるものと言いますが、人生にも大きく影響してくるのは確実です。面白半分で悪ふざけを投稿すると、取り返しのつかない事態になり得ることを肝に銘じなければなりません。

「風説の流布」と信用棄損罪・業務妨害罪

またインターネット上に虚偽の風説を流し人の信用を棄損したりその業務を妨害する者は、信用棄損罪及び業務妨害罪(刑法233条)に該当し3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。風説の流布とは不特定多数の人に事実に反する噂を流すことで、インターネット上でも非常に問題となっています。バカッターの投稿も風説の流布に該当するものがあり、例えば熊本地震直後に「地震によりライオンが逃げ出した」とTwitterに投稿した男性が逮捕されたケースがあります。最終的には不起訴になりましたが、悪質なケースでは起訴される可能性があることに気を付ける必要があります。

コンサートチケットの高額転売

また、ありがちなのが有名ミュージシャン等のコンサートチケットを転売するケースでしょう。近年はオークションサイトに加えて“フリマアプリ”等も興隆していて転売の場はいくらでもありますが、実はこれも犯罪行為になり得るのです。

古物営業法違反になる

ここで言う「古物」とは「一度使用された物品若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」を言い、コンサートチケットも該当します。「古物営業法」で古物の売買を反復して行おうとする者は古物商許可証をとらなければならないと定められており、許可なくコンサートチケットを繰り返し転売するとこれに抵触する訳です。罰則は3年以下の懲役または100万以下の罰金です。

逮捕された例もあるが

実際に、2016年には某アイドルグループのコンサートチケットを高額転売したとして女性が逮捕された事例があります。チケットの高額転売について経済学者等専門家は、何ら問題はないと見ていますが、ファンの間では反対の声が大きいと言います。

人権・プライバシーにも気を付けねばならない

インターネットでは、人権やプライバシーを侵害する様な投稿が頻繁に見受けられますが憲法は国民に対して基本的人権を保障しており、その内容には幸福追求権の保障、法の下の平等等が含まれます。この様な権利の侵害は人権侵害として民事上で損害賠償請求等の対象になる他、場合によっては名誉毀損等刑事上犯罪行為として刑事罰が下されることがあるので注意が必要です。

インターネット上の人権侵害

インターネット上の人権侵害行為は“プライバシー権”や“人格権”が深く関わってきます。しかしこれらの言葉自体は聞いたことがあっても詳しくは理解していない方が多いのではないでしょうか。

肖像権・人格権侵害

「肖像権」は他人から無断で写真を撮られたり、それを無断で公表及び利用されない様主張できる権利ですが、刑法にはその規定はなく刑事上に責任を問われることはありません。人格権は肖像権に含まれる権利であり例えば差別的取扱いやいじめ、セクシュアルハラスメント等が人格権の侵害に該当します。また「生命、身体と共に極めて重大な個人の人格的利益を保護する権利」とされていますが、人格権の明確な定義付けはなされていません。侵害行行為には差し止め請求ができる場合もありますが、悪質なケースに限られます。

プライバシーの侵害

プライバシー権とは私生活に関する事柄は他人から干渉されたりのぞかれないといった法的保障・権利です。私生活の一部を無断でネットに投稿し露見させると言ったケースの他、氏名、住所、電話番号等をみだりに公開することもプライバシーの侵害になると考えられています。被害を受けた場合は損害賠償請求ができますがネット上では情報が匿名で発信されることがほとんどで、この場合裁判でプロバイダーに書き込み主の個人情報の開示を請求し、その上で賠償請求する流れになります。

ネット犯罪行為にならないようセーフ・アウトの線引きはしっかりと

便利で快適なインターネットですが、一歩間違えると犯罪者になってしまします。今回紹介した法律を認識し、どこまでがセーフでどこからがアウトなのかをしっかりと把握することが大切です。

ネット誹謗中傷問題に強い弁護士事務所

こんな記事も一緒に読まれています

同じカテゴリの関連記事

風評被害でお困りの方へ

ネットの誹謗中傷でお悩みならまずはご相談ください。

  • ネット誹謗中傷の削除
  • 誹謗中傷犯人の特定
  • 検索結果からの削除

インターネットの利用者は、人口の80%程となっています。

スマホの登場やSNSの利用者増加に伴い、自社サイトを持たないお店であってもネットの風評は見逃せない時代になっています

法人から個人も弁護士に相談を

ネットの風評被害にお悩みの企業様から、個人の方も相談可能な弁護士を掲載しています。

  【運営会社】株式会社Agoora 〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4-7-1-302
© 2024 Agoora.inc.